初めての人のための漢詩講座 9
第二章 漢詩のルール
平仄と韻の調べ方
平仄と韻は辞書で調べることができます。漢字を漢和辞典で調べると、平仄と韻、意味、熟語などが記されています。意味と熟語は読んでのとおりなのですが、平仄と韻は少し独特な表記がされています。
平声 仄声
□左下 □左上 □右上 □右下
上平声・下平声 上声 去声 入声
辞書にもよりますが、小さな四角の中に韻の種類が書いてあり、その四隅のいすれかに印(「・」や「/」)が記されています。そして、その隅の位置が平仄を表しています。平仄は(6)「平仄と韻」で述べたとおり、平声と三種の仄声からなりますので、それぞれの隅がその四つの種類を示しているわけです。
左下の隅が平声で、その場合、韻字表にある三十種類のいずれかの韻が書いてあるはずです。残りの隅が三種の仄声を示していますが、この講座では仄声を区別しませんので、とりあえず左下が平声、それ以外が仄声と覚えてもらえば結構です。仄声の種類については(13)「*上級編! この章での専門用語」で説明します。
と、辞書の引き方を説明してきましたが、実は今は平仄や韻だけならインターネットで簡単に調べることができます。昔は分厚い辞書を開いて調べるしかなかったものですが、便利になったものです。
「平仄検索」で検索すると、平仄や韻を表示してくれるサイトがいくつか出てきます。あとはそのサイトの説明に従って調べたい漢字を入力するだけです。
漢和辞典が収録されている電子辞書ならインターネット環境がなくても、調べることができます。ただし、詳しい意味を知るなら書籍の辞書が必要です。電子辞書やインターネットを使うのは、平仄や韻を調べるだけにとどめ、実際にその字を使う段階になったら、書籍の辞書でしっかりと調べるのをおすすめします。
漢字は意味によって平仄や韻が変わる!
辞書を引いてもらえばわかると思いますが、平仄や韻が一つではなく、複数載っている漢字が出てきます。
たとえば、「行」という字は、
平声に二つの韻(陽、庚)
仄声に二つの韻(敬、漾)
があります。一つの漢字に四つの発音があるわけです。このうち仄声の二つは、とりあえず漢詩を作るのに区別する必要はありませんので、平声の七陽、八庚と仄声の三種類の発音があると覚えておいてください。
「行」という漢字は、「並び」という意味では七陽となり、「行く」という意味では八庚となり、「修行」という意味では仄声になります。つまり、詩の中で、どのような意味で使われているかによって平仄や韻が決まり、その平仄や韻にちゃんと合った場所でしか使えないということです。
この「行」という字は要注意ですので、十分に気をつけてください。
「行」以外にも意味によって平仄が変わる字はいくらでもあります。ということは平仄を確認するときには、意味もしっかりと確認しなければならないのです。書籍の辞書で調べることが重要である意味はここにあります。
→(11)「平仄式とは」へ
→(10)「上級編! 使ってはいけない漢字」へ