初めての人のための漢詩講座 10

平兮 明鏡
2021/6/15

第二章 漢詩のルール

*上級編! 使ってはいけない漢字

(6)「平仄と韻」の項で、「すべての漢字が平声と仄声に分けられる」と言いましたが、あれは実は嘘です。その平声でも仄声でもない漢字が使ってはいけない漢字なのですが、その話の前に音読み訓読みの話をしなければなりません。

今まで漢字の発音と言ってきましたが、実はこれはすべて音読みのことです。音読みとは中国語の読み方のことで、さらに時代によって呉音や漢音など、音読みの読み方にも違いがあります。

そして、漢字にはもう一つ訓読みという読み方があります。これは、1500年以上前に漢字を中国から輸入した日本人が、自分たちが使う日本語の言い方に合わせて、勝手に付けた読み方です。

さらに日本人は漢字の読み方を変えるだけでなく、自分たちで漢字を創作しました。その日本で作られた漢字を国字《こくじ》といいます。国字は日本で作られたので訓読みだけで音読みがありません。つまり、平仄や韻がないのです。

漢詩は、発音のルールに則って作られるリズムのある韻文です。ですので、その発音のない国字は、どうやっても漢詩で使うことができないのです。

国字の一部を挙げると、

「榊《さかき》・笹・雫・躾《しつけ》・辻・峠
 凪・匂・畑・働・噺・桝《ます》・枠《わく》」


などがあります。私たちにとってはなじみのあるよく使う漢字だとわかると思います。 辞書では「国」や「国字」と表記されていて、当然、平仄や韻が記されていません。

→(11)「平仄式とは」へ

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