初めての人のための漢詩講座 6

平兮 明鏡
2021/5/15

第二章 漢詩のルール

平仄と韻

平仄

漢字本来の発音、つまり中国語のアクセントは、音の高低による抑揚によって決まります。平たく伸ばす音を平声といい、それ以外の音を仄声といいます。

前回の楓橋夜泊にあった平仄記号は、「○」が平声を、「●」が仄声を表しています。

仄声は、さらに上がりの調子の音、下がり調子の音、詰まった音に分けられますが、とりあえず漢詩を作るには、この仄声の区別は必要ありませんので、今は、すべての漢字が平声と仄声に分けられる、と覚えておきましょう。

韻を踏むという言葉を聞いたことがあると思います。韻を踏むとは、同じような発音を持った言葉を規則的に配置することによって、心地よいリズムを作ることです。例を挙げてみましょう。
 

風吹きわたれ
風車よまわれ
まわれば粉屋が粉をひく
ひいたらパン屋がもっていく
それでパン屋はパンを焼く
うちに届くの朝早く
 

「オフ・オフ・マザーグース」和田誠 訳(ちくま文庫)

「わたれ」と「まわれ」、「をひく」と「ていく」、「を焼く」と「早く」で韻を踏んでいます。このように韻を踏むことにより、軽快なリズムで楽しく読むことができるのです。

ちなみに、こちらがマザーグースの原文です。どのようなリズムになっているでしょうか?
 

Blow, wind, blow!
And go, mill, go!
That the miller may
Grind his corn;
That the baker may take it,
And into bread make it,
And bring us a loaf in the morn.

漢詩でも同じように韻を踏みます。押韻《おういん》といいます。漢詩では押韻のために、すべての漢字が同じような発音のグループにひとまとまりに分類されています。あとで説明しますが、起句・承句・結句の七字目はすべて同じグループの韻から選ばなければなりません。

平声にも仄声にもそれぞれに韻の分類があるのですが、漢詩では平声の韻で押韻することが多いですので、この講座では平声のみに絞ってお話します。

平声は、さらに上平声下平声に分けられ、それぞれ十五の韻があります。つまり、全部で三十韻になります。ちなみに、漢詩の韻は全部で百六種類あります。平声が三十ですので、残り七十六種類はすべて仄声の韻です。

実際にどのような韻があるかは、(7)「*資料集! 韻字表」として、別ページに載せていますので、そちらを見てください。

→(9)「平仄と韻の調べ方」へ
→(7)「*資料集! 韻字表」へ

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