達磨図を描く- 実践編(3)

山田 真隆
2022/4/30

15,「口ひげ」を描きます

■ 使用する筆:羊毛筆(大)

筆を水に浸け、手で毛を押さえて平たくする

 
「口ひげ」を描く前に、使う筆を山馬筆から羊毛筆(大)に換えます。まずは筆の毛の形を変えます

(1)筆を水に浸ける
(2)手で毛を押さえて平たくする


平たくなった毛先に少し墨を付けたら、口の上の中央から左右外側に向けて、払うように描きます。
 

16,「あごひげ」と「頭髪」を描きます

■ 平たくした筆の先に、まず水を付け、次に少し墨を付ける

 
15と同様に、筆を平たい形にします。今度は筆の先にまず水を付け次に少し墨を付けます。こうすることで、墨の濃度をコントロール出来ます。あまり濃くしないことが重要です。

あごひげは、右あごから描き始めます。口元あたりの高さから、あごの下端まで縦方向に筆を動かしそれを繰り返して顔面左側へと描き進みます。

次に、あごひげと繋がるようにして、後頭部の頭髪を描きます。描いているうちに墨が薄くなりますが、ちょうど立体感のようになり、味が出ます。
 

17,「眉毛」を描きます

■ 平たくした筆の先に、まず水を付け、次に少し墨を付ける

■ 右眉を描いたら、そのまま墨を付けずに左眉を描く

 
15・16と同様に、筆を平たい形にします。筆の先にまず水を付け次に少し墨を付けます。

眉毛は右の眉から描きます。目のやや上から斜め下に向かってサッと一気に筆を払います。そして、そのまま墨を付けずに、左眉も同様の要領で描きます。

これで、達磨図の顔の部分はほぼ完成です。
 

18,「左肩」を描きます

■使用する筆:山馬筆(大)

 
達磨図の身体(法衣)の部分を描きます。ここで、使う筆を羊毛筆から山馬筆(大)に換えます。

山馬筆(大)たっぷりと墨を付けて、まず法衣の左肩にあたる部分を描きます。耳の下あたりから紙の外端に向かって、太く濃い線を描きます。
 

19,「左襟」を描きます

 
山馬筆にたっぷりと墨を付けて、肩を描いた始点に筆を下ろしたら、下方やや斜め太く濃い線を伸ばします。どのぐらいまで伸ばすかは、画像を参考にしてください。
 

20,「右襟」を描きます

 
右あごのあたりから、下に向かって緩やかな曲線を描きます。もう一方の左襟と対を成すものなので、この2本の線は交差しないように気を付けます。
 

21,「法衣のひだ」を描きます

■21→22は墨を付け足さない

 
両襟の下端あたりに、左側から右側へ向けて、太く濃い線で「」の字を書きます。
 

22,「右肩」を描きます

■21→22は墨を付け足さない

ひだを描いたら、そのまま墨を付け足さずに、続けて右肩を描きます。

右襟を描いた始点に筆を下ろし、用紙の左端に向かって、斜め下の方向に一気に描き下ろします。
 

23,「ひだ」を描き足します

 
墨を少し付け、左襟の下あたりから右襟に向かって描きます。これも、ある程度かすれたほうがいいでしょう。
 

24,もう1本描き足します

 
墨を少し付け、2123で描いた2本のひだの間に、もう1本の「ひだ」を描き足します。

これで、達磨図の身体(法衣)の部分は完成です。
 

25,「右目の瞳」を描きます

■使用する筆:山馬筆(小)

 
画竜点睛ということで、最後にを入れます。まずは右目の瞳から描きます。

山馬筆(小)に墨を付け、右眼球の上部に小さく描き入れます。瞳だからといって丸く描かないのがコツで、あえていえばアルファベットの「」か、片仮名の「」の字のように描きます。瞳の中央の部分には、必ず余白を残すようにします。
 

26,同じく左目の瞳を描きます

 
同様に、左目の瞳を入れます。
 

これで、達磨図は完成です。落款(署名のような意味の印章)を押せばなお良しです。


完成した達磨図

おわりに:

さて、どんな達磨さんが描けたでしょうか?

達磨図に取り組むことは、坐禅と同様に、自分の心と向き合う修行です。そしてそれは、自分自身を描くことでもあります。この連載を通じて、ひとりでも多くの方が、今まで知らなかった自分自身に出会う喜びを感じて頂ければと願っています。

また、実践編(1)の冒頭にも書き添えましたが、この連載はあくまでも入門者向けのものです。達磨図に興味を持たれ、本格的に取り組みたい方は、先生に就いてしっかり学ばれることをおすすめします。
 
4回に渡ってお送りした「逹磨図を描く」は、これで終了となりますが、達磨図は「描いたらおしまい」ではありません。

 
描いた後には、漢詩を添えたり、印章を制作(篆刻*)して自分の落款(らっかん:サインとして書画に用いる印)を押したり、完成した作品を表装(書画に布や紙で縁取りや裏打ちすること)して、掛け軸など自分だけの作品を完成させる愉しみもあります。
 
ZENzineでは、達磨図を教えて頂いた山田一灯師による「篆刻講座」(印章制作の入門コンテンツ)の零細も予定しています。どうぞお楽しみに。(編集部)


達磨図講師

田一灯(泰雲)

1944年、石川県生まれ。臨済宗国泰寺派 吉祥寺 現住職。
日本宗教画法学院より1996年に認定書を授与され、「一灯」の雅号を授けられる。
 


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