達磨図を描く- 実践編(1)

山田 真隆
2022/4/30

実践に入る前に:

この連載は、あくまでも入門者向けのものです。本格的に達磨図制作に取り組みたい方は、しかるべき先生に教えを乞うべきでしょう。このことをご了承頂いた上で、気軽にお楽しみ頂ければと思います。
 
また、達磨図を描くには相応の道具が必要になります。「かすれ」や「にじみ」を描き分けて繊細な墨の濃淡を表現するためには複数の山馬筆や羊毛筆、画仙紙などが必須ですし、達磨さんの全身を描くには大判の半切用紙を用意しなければなりません。

しかし、「手軽に描いてみたい」という方は、この実践編を参考にしながらお手持ちの書道用具で始めることも可能です。一般的な半紙太筆中筆細筆があれば達磨図を描くことができます。この機会にぜひ、達磨図に挑戦してみて下さい。(編集部)

準備するもの:

  1. 山馬筆《さんばふで》大・中・小を各1本ずつ羊毛筆《ようもうふで》大を1本
    *とりあえず手持ちの筆で始めるのも良いが、この4本を揃えるのが望ましい。

    山馬筆:山馬(サンバー)と呼ばれる鹿毛で作られた筆。特有の荒々しさを持つ

    羊毛筆:山羊の毛で作られた筆。柔らかく粘りがあり、穏やかな味わいを持つ
     
  2. 画仙紙《がせんし》の半切《はんせつ》(縦136cm×横35cm)
    *「顔だけ」を描く場合は半紙でも良い。

    画仙紙:書画に用いる大判の用紙。墨の発色やにじみ、かすれなどの表現に適している
     
  3. :どんなものでも良いが、できれば松煙墨《しょうえんぼく》がきれいに仕上がる
     
  4. :どんなものでも良い
     
  5. 下敷:フェルト生地の書道用下敷き(なければ新聞紙でも良い)
     
  6. 文鎮:半切の場合は紙が大きいため、上下に2つ必要(半紙なら1つで良い)
     
  7. 写画《しゃが》:半紙サイズまたはA4サイズの手本(このページから無料でダウンロードできます)

    写画:手本となる達磨図を模写したもの

「写画」の準備:

必要な道具が揃ったら、次に写画を準備しましょう。写画にする達磨図は自由に選んで頂いて構いませんが、ここではZENzineからダウンロードできる写画を用いて説明します。
 

達磨図写画(A4サイズ)

 
1,写画のダウンロードと印刷

こちらのリンクから写画をダウンロードし、A4サイズの用紙に印刷します。
 

 
2,書道紙の下に写画を敷きます

用紙を縦半分、横半分に折ります。縦横の折り目の交点が、用紙のちょうど中央にあたります。最初はその中央を起点として「鼻」を描きますので、写画を下図のように半切の中央に合わせてください半紙に描く場合は、半紙の上辺写画の上辺を合わせて中央に置いて下さい。
 

実践〜達磨図を描いてみましょう:

こちらが写画の元となる達磨図です。この達磨図をイメージしながら描くと良いでしょう。
 

1,最初に「鼻」を描きます

■ 使用する筆:山馬筆(大)

■「1」→「4」は筆に墨を付けない

 
まず山馬筆(大)に墨を付け、先ほどご説明した用紙の中央に筆を下ろします。筆を下ろしたら、「し」の字を書くように下へ運び、運筆の終わりに少し上げます。この過程は途中で止めたりせず、必ず「ひと筆」で書いてください
 
*筆の太さ(大・中・小)について:「山馬筆(大)」「山馬筆(小)」のように太さを指定してある項目以外は、写画や手本にする達磨図を参考にしながら、各自の判断で自由に使い分けて下さい。
 

*達磨大師のことを「鼻祖」《びそ》ともいいます。中国には「胎内で最初に形が出来るのは鼻である」という伝説があります。このことから、鼻が「物事の始まり」を指すようになり、禅宗の始まり(開祖)である達磨大師を「鼻祖」と呼ぶようになりました。

2,次に「小鼻」を描きます

 
次に、描いた鼻の右下あたりに「小鼻」を描きます。「つ」のような感じで描くとよいでしょう。
 

3,反対側にも「小鼻」を描きます

 
同じく、鼻の左下にも反対側の小鼻を描きます。
 

4,「ほうれい線」を描きます

 
「2」で描いた小鼻の右側に「ほうれい線」を描きます。
 

5,墨を継ぎ「右目」を描きます

■ ここで筆に墨を付ける

「5」→「8」は筆に墨を付けない

 
墨を付けたら、鼻の一番上の辺りから左の方に向けて短い線(目の上の部分)を描きます。画像のように、変形した「く」の字のような形にすると立体感が出ます。
 
 

6,右目の輪郭を描きます

 
「5」の線の左下から鼻との間に、右目の輪郭となる曲線を描きます。
 

7,同様に左目を描きます

 
同様に左目も描きます。「く」の字の線を描き、その下に左目の輪郭となる線を「くの字線」の両端に描きます。
 

8,左目の仕上げ

 
目の部分の仕上げとして、左目の右端に描いた線にかすれた線を加えます。この「かすれ具合」を出すため、出来れば右目と左目の輪郭を描く際には墨を継がないで描いてください。この「かすれ具合」については、「完成した達磨図」を参考にして描いて下さい。
 

実践編(1)は、ここまでです。続きは実践編(2)をご覧下さい。


達磨図講師

山田一灯(泰雲)

1944年、石川県生まれ。臨済宗国泰寺派 吉祥寺 現住職。
日本宗教画法学院より1996年に認定書を授与され、「一灯」の雅号を授けられる。
 


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