お墓でよく見るあの「板」って何?
間もなく、愛知県春日井市ではお盆のシーズンを迎えます。
お盆の時期には、お墓参りに行くという方も多いのではないでしょうか?
お墓でよく目にする「長い木の板」――あれが何なのか、どのように書かれているのか、皆さまはご存知でしょうか?
今回はあの「お墓でよく見る板」についてお伝えしていきます。
まずは動画をご覧ください
「木の板に文字を書くときのコツや道具選び、塔婆に書かれた文字の意味とは?」
お墓にたっているあの木の板を、「塔婆《とうば》」もしくは「卒塔婆《そとば》」と呼びます。サンスクリット語の「ストゥーパ」という語が元でそれが音訳されて「卒塔婆《そとば》」になりました。「ストゥーパ」の意味は「仏塔」という意味で、お釈迦さまのご遺骨を収めた塔(墓所)や、もう少し広義には礼拝の対象となる建物のことを指すようです。
諸説ありますが、古来より仏塔を建立することは、大きな功徳を積むことができる善行の一つとされてきました。それが高じて、塔を建てることが、亡き方へのご供養の気持ちをあらわす大切な形となっていったのでしょうか。
現代においては、誰かが亡くなったときに実際に塔を建てることは難しいので、塔の形を模したこのような木の板を建てることで、供養の証とするケースがほとんどです。
この塔婆をたてる機会は様々です。例えば私の預かるお寺では、 四十九日や百か日 、一周忌や三回忌などのご法事の時に、その都度お書きします。また、お盆やお彼岸などの仏教行事の際に書くこともあります。(上の動画では、実際に塔婆を書いているところを載せています)
塔婆は、地域や宗派、仏事の種類ごとに、長さや幅、書く文言が違ってきます。中には、人の身長よりも長いものも。
ただし共通して言えるのは、各お寺の和尚さん方がまごころを込めて書いている、という点でしょう。
最近は塔婆用のプリンターというものもあり、印刷が可能だったりします。また業者さんに頼めば、決まった文字を印刷した状態で納品していただける、というサービスもあるようですね。
これらは「とても便利で時間の節約になっていいなぁ」と思わなくもありません。しかし反面、私自身は塔婆を書くことで、亡くなられた方のことを思いだしたり、遺されたご家族のことに思いをはせる時間になっている、という実感があり、それを人任せにしてしまうのはどこかもの寂しい感じがしています。(もちろん、書の稽古にもなります)
「書く」ということに限らず、何かをするとき手間を省いて時間を削るということは、確かに合理的です。それ自体を否定するつもりはまったくありません。しかし、それと引き換えに「自分を取り巻く、お世話になっている人やものへ思いをはせる豊かな時間」も同時にそげ落ちてゆく可能性がある、ということは肝に銘じておきたいと常々思っています。
皆さまもお墓参りに行かれて塔婆を見かけたら、誰かが亡き方を偲んでしたためられているのだということに、少し思いをはせていただければ幸いです。
*8月の「禅書庵」はお盆のため休載いたします。また9月から再開いたしますので、ぜひ引き続きご愛読ください。