初めての人のための漢詩講座 22

平兮 明鏡
2021/11/1

第三章 漢詩を作ろう

詩語集を活用する

いよいよ漢詩を作っていきます。

とはいえ、いきなり自分で漢文を作るのもなかなか難しいと思います。しかし、安心してください。漢詩には二千年以上の歴史がありますので、その長い長い年月の中で洗練された漢詩の熟語・詩語を、先輩たちがまとめてくれています。私たちは、その詩語集の中から詩語を選んでいけば、自然と風雅と格調をそなえた詩を作ることができるのです。

詩語集は、昔からいろんな本が出版されていますが、専門書なのでなかなか高価で入手が困難なものが多いです。

一般向けの書籍なら、

・太刀掛重男 著「詩語完備 だれにもできる漢詩の作り方」
 (松雲堂書店・東京都千代田区神田神保町3-1)


が、手ごろな価格で使いやすくておすすめです。
禅門に向けられたものなら、

・青山社「禅林詩偈用語集」

が、禅や仏教に関する詩語が揃っています。

そのほかの書籍はインターネットで「詩語集」や「詩語表」で検索して、いろいろと探してみてください。

古書であれば、国立国会図書館デジタルコレクションで「詩語」と検索すれば詩語集をいくつか閲覧でき、またPDFとしてダウンロードすることもできます。

渥見竹治郎 編「近世詩語玉屑(上下)」
 

詩語は二字と三字のパーツに分かれている

詩語集を実際に見てみると、二字の詩語と三字の詩語が並んでいます。
(※参照「*資料集! 詩語集とはどんなもの?」)

つまり、詩語のパーツはその2パターンしかなく、あとはそれぞれ○と●の組み合わせのみ、ということになります。

平仄式の平仄をもう一度見てみましょう。

・平起式

起句 *○ *● ●○◎
承句 *● *○ *●◎
転句 *● *○ ○●●
結句 *○ *● ●○◎

・仄起式

起句 *● *○ *●◎
承句 *○ *● ●○◎
転句 *○ *● *○●
結句 *● *○ *●◎

漢詩の区切りは「二字・二字・三字」と決まっていて「二字・三字・二字」や「三字・二字・二字」で区切ることは許されません。上四字の「二字・二字」のパーツと下三字の「三字」のパーツしかないのです。

そして、そのパーツは、

上四字は       「*○」 「*●」
起・承・結句の下三字は「●○◎」「*●◎」
転句の下三字は    「○●●」「*○●」

の6パターンしかないことがわかります。つまり、詩語集のパーツはこの6つに分けられています。
詩語集でピッタリ合う詩語が見つからないときは、辞書の熟語の欄を調べてみると見つかるかもしれません。
辞書によっては、末尾にその字がくる熟語も載せていますので、押韻や平仄合わせにも役立ちます。

→(26)「実際の作例」へ
→(23)「資料集! 詩語集とはどんなもの?」へ

page up