初めての人のための漢詩講座(2)

平兮 明鏡
2021/4/8

第一章 漢詩とは

漢詩の形式~絶句と律詩

もし、漢詩を知っている人は、七言絶句五言絶句という言葉を思い浮かべるかもしれません。これは1500年前の中国の唐の時代にできた漢詩の形式で、実は漢詩そのものは、もっともっと以前、中国最古の詩集「詩経」に見られるように、2500年以上も前(!)からあります。

しかし、唐の時代以降は現在に到るまで、多くの漢詩が絶句や律詩の形式で詠まれてきました。それは、絶句や律詩がもっともコンパクトで整った形式だったからです。長い時代の中で洗練されていき、唐の時代になってついに漢詩の型が完成されたといってよいでしょう。

この漢詩講座では、基本的に七言絶句のみを取り扱いますので、これ以降は七言絶句を指して漢詩という言葉を用いていきます。

それでは、実際に七言絶句を見てみましょう。

少年易老學難成 少年 老い易く 学成り難し
一寸光陰不可輕 一寸の光陰 軽んずべからず
未覺池塘春草夢 未だ覚めず 池塘 春草の夢
階前梧葉已秋聲 階前の梧葉 已に秋声

少年はあっという間に年老いてしまい、学問を成就させるのは難しい。
一瞬の時間も軽んじてはならない。
池の塘《つつみ》の春の若草の夢もまだ覚めないというのに、
階段の前のあおぎりの葉からは、もう秋風の声が聞こえてくる。

みなさんもおそらくご存知でしょう「少年老い易く学成り難し」のもととなった漢詩です。

前半は人生における時間の大切さをいい、後半では季節の風景の中にその教訓を詠み込んでいます。この詩は長い間、朱子学の大成者・朱熹《しゅき》の作品だと言われていましたが、現在では禅門の詩ではないかと言われています。

このように七字の句が四つ並んだ漢詩が七言絶句です。四つ句が並んだ形式を絶句といい、その各句が七字なので七言絶句です。ということは、五字の句が四つ並べば五言絶句となります。

四つの句を順番に、起句・承句・転句・結句といい、いわゆる物語などの構成法の起承転結は、漢詩の起承転結がもとになっています。

また、八句並べば律詩といい、同じように七言律詩・五言律詩となるわけですが、ここでは七言絶句のみを見ていきます。七言絶句以外の形式については後述の「*上級編! 漢詩の分類~近体詩と古体詩」で説明しています。

また、漢字のみで書かれた漢詩本文の部分を白文といい、その下の日本語に読み下したものを読み下し文といいます。

→(5)「第二章 漢詩のルール」へ
→(3)「*上級編! 漢詩の分類~近体詩と古体詩」へ

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