フォトギャラリー~仏教の聖地巡礼~(6)

谷川 光昭
2025/8/22

クシナガラ~80年のご生涯

クシナガラは人口が2万人程の村です。ブッダガヤやサールナートと比べると穏やかで静かな場所といった雰囲気です。

お釈迦様は現在のネパール国境にも近い、ここクシナガラで80年の生涯を閉じられました。霊鷲山《りょうじゅせん》から北上し、故郷のカピラ城を目指す最後の旅の途中でした。

大涅槃寺 建物の前には二本の沙羅の樹が青々と茂っている

お釈迦様が涅槃に入られたこの場所には、大涅槃寺が建てられ、中には6メートルほどの大きな涅槃像が安置されています。

この涅槃像は、19世紀に近くを流れるヒラニヤヴァティー河の底から発掘されました。5世紀、グプタ王朝期に作られたのですが、河底にあったおかげで破壊を免れたのでしょう。

涅槃像を拝する円覚寺 横田南嶺老師
涅槃像が発掘されたヒラニヤヴァティー河 「黄金を産する河」という意味をもつ

大涅槃寺の正面には二本の沙羅の樹が植えられています。
 

「さあ、アーナンダよ。わたしのために、二本並んだサーラの樹(沙羅双樹)の間に、頭を北に向けて床を用意してくれ。

『仏典をよむ1 ブッダの生涯』中村元 岩波書店 2001年

「沙羅双樹の花の色」 時期的に花を見ることはできなかった

『平家物語』にも出てくる有名な一節、

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす」

日本人には大変馴染み深い一節ですが、この「沙羅双樹」は、お釈迦様が亡くなられた場面から引用されています。永遠なるものは何一つとしてない、という諸行無常の教えを表すのに、お釈迦様入滅を象徴するこの沙羅双樹ほど相応しいものはないかもしれません。

お釈迦様が最後に説法をされた場所に建てられた精舎(Matha – Kuar Shrine)

近くのお釈迦様が最後に説法をされた場所には、小さな精舎が建てられています。また、お釈迦様が火葬された場所にはランバル・ストゥーパ(荼毘塚)が建てられており、ここでお釈迦様が亡くなられたのかとしみじみと感じ入ります。

お釈迦様が荼毘にふされた場所に建てられたランバル・ストゥーパ

お釈迦様は亡くなる三ヵ月前に修行僧たちにこう説法されました。
 

「もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠けることなく修行を完成させなさい。」

『仏典をよむ1 ブッダの生涯』中村元 岩波書店 2001年

お釈迦様が涅槃に入られ、すでに2500年以上の歳月が経ちました。インドを訪れ、各地の仏跡を巡る中で「すべてのものは過ぎ去ってゆく(諸行無常)」ということが嫌というほど身に沁みました。そして、それはお釈迦様の教えを再確認する旅でもありました。

クシナガラに立ち、こうして身近にお釈迦様を感じ、お釈迦様の言葉をくり返しめぐらし自戒するのでした。

こうして弟子たち信者たちに最期の説法をしたのかと想像する


※本連載は、神宮寺報「山河」014号に掲載されたものを加筆・修正したものです

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