朝は「おかゆ」でスタート(2)

亀山 博一
2021/4/8

ただ単に「お粥を食べる」だけなのですが、「どんなふうに食べるか」を工夫するだけで、実は毎朝の修行にもなるのです。まずはお粥から始めて、いつもの食事やティータイムにも応用してみましょう。


背筋を伸ばして

デスクワークやスマホの常用で猫背ぎみ、背中を丸めて食事をする方を見ることがありますが、朝にお粥をいただく時には、椅子に深く腰掛け(または座布団の上で正座して)、背筋を伸ばして食べてみましょう。気持ちもシャキッと伸びて、食欲も湧いてきます。

まずは感謝

器に盛り付けが済んだら、まずは合掌して、ちょっと目をつむりましょう。私たちは大自然の恵みを、沢山の命をいただくことで生かされています。

目の前のお米も、梅の実も、大根も、塩も全部、大きな大きな命の一部。いただけるのは、育てたり収穫したり加工してくれた多くの方々のおかげ。「ありがとうございます。おいしく大事にいただきます」と感謝の心で合掌しましょう。

「いま、ここ」に集中

食べる前に、ゆっくりおおきく深呼吸。今、この瞬間、食べることだけに心を集中しましょう。心配事は忘れて、今日のスケジュールのこともちょっと置いておいて、このひとときを心から楽しみましょう。

心を落ち着けようとして「集中できない、どうしよう!」と焦ってしまったり、無理に集中しようとするせいで疲れたてしまったりするのは、逆効果。では、どうしたら良いのでしょう?

丁寧に、食べる

心はそのままに、放っておきましょう。まずは身体から。動作から。

食器の音を立てず、丁寧に、静かに、こぼさないように、口に運びます。お椀に口を付けてお茶漬けみたいにかき込むのではなく、お箸を使って、ゆっくり、ゆっくり、ひとくち、ひとくち。
もちろん、食べにくければ、スプーンやレンゲでも結構です。

じっくり、味わう

口に入れたらゆっくり噛む。急いで飲み込まない。ただ「噛んで飲み込む」のではなく、その前にじっくり味わいます。素材ごとにちがう歯ごたえ、食感。そして、塩の味、お米の味、大根の味、梅干しに残る青々とした梅の実の風味。香ばしい白ごまの風味。ひとつひとつを「味わい分け」してみましょう。

じっくり味わっているうちに、ほら、いつの間にか完食です!

お粥のような、真っ白な時間を

シンプルなのに奥が深い、お粥ワールド。準備編と食べ方編の2回に分けてお届けしました。いかがでしたか?

何かと慌ただしくて落ち着かない朝のひととき、お粥のように真っ白な時間を作ってみるのもいいかもしれません。真っ白とは「何もない」ではありません。その中に、普段は気付くことができない豊かな世界が広がっているのです。

お粥はきわめてシンプルな食事だからこそ、「食べる」という動作、そして味覚に集中することで、普段の食事では気付かなかった、豊かな感覚の世界に気付くことができるのではないかと思うのです。

さいごに

幼い頃は、母や祖母の手作りのご飯が、おいしくておいしくて、いつも楽しみでした。
思い切り遊んだら、お腹がグーっと鳴って、ご飯が待ち遠しくなる。家に帰ると、いい匂いが。
嫌な出来事があっても、友だちとケンカしてふてくされていても、ご飯を食べたらアラ不思議。
ちゃんと元気になっていたものです。

成長するにつれて、考える事も多くなりました。学校や仕事、面倒な人間関係。「不安や悩み事が食事の時も頭を離れない」という方も多いかもしれません。そんな時こそ、まずは「食べる」という行為の原点に帰ってみてはいかがでしょうか。実は、これも立派な禅の修行なのです。

「うれしい!」「おいしい!」と、素直に食べるということの幸せを、思い出してみましょう。
お母さんが作ってくれたご飯を、夢中で食べていた子供の頃のように。


 

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