フォトギャラリー~仏教の聖地巡礼~(3)

連載「フォトギャラリー~仏教の聖地巡礼~」(全7回)は、初めてお釈迦様ゆかりの地を訪れた僧侶の聖地巡礼の旅を、写真と共にたどる旅行記です。驚きと感動に充ちた体験を、写真を交えながらお伝えできればと思います。
未知の国 インド
四大聖地を巡ると言っても、どちらかというと一気に駆け抜けたようでした。お釈迦様が実際に活動をされた範囲は広大で、お釈迦様の足跡である仏跡をわたしたちは車や飛行機で移動して辿りました。
例えば、お釈迦様がお悟りを開かれたブッダガヤから最初にお説法をされた初転法輪の地サールナートまで、お釈迦様は7日間かけて歩いたといいます。その道のりを私たちはバスに揺られ、8時間ほどで移動できたのです。

現在のインドは、首都のデリーをはじめとする都市でビルが次々と建設され、経済成長の途中の国というイメージがあるかと思いますが、わたしたちが旅したインド北西部はまだまだ経済成長の影響が少ない土地でした。

レンガ造りの家の前には牛が飼われており、道端にはたくさんのゴミが捨てられていました。家にはトイレが備わっておらず、道中でも畑の中でしゃがみ込んでトイレをする人たちを車窓からも見かけました。
農村部では台所などで使う燃料も牛のフンを藁などと混ぜて固め、干して使うようで、家先に積み重なっている様子には、最初は大変驚かされました。

そんな目に飛び込んでくる日本では見ることができない景色のすべてが新鮮で、長時間のバスでの移動は退屈するかとも思えましたが、道中はまったく飽きることがありませんでした。
地平線から昇る日の出を見ることができたのは、信州に暮らすわたしにとって思いもかけない幸運でした。

広場でクリケットをプレーする人たち、石炭を荷台いっぱいに積み込んだトラック、菜種油を採るために育てられている黄色い菜花の畑、家の前に車座で語らう人たち、道ですれ違うたくさんの牛たち、そしてどこまで続くのかわからない地平線……。


2500年前にお釈迦様が修行をされ、悟りを開かれ、そして各地を巡りその教えを広められた場所。その布教伝道された場所をわたしはバスで移動しただけですが、その活動範囲の広さに驚愕せずにはいられません。
そして尚更、仏教が生まれたこの地で、仏教が根付かなかったことに寂しさを覚えました。
お釈迦様が80歳で涅槃に入られるまで生きていたこの広大な大地の空気を味わいながら、往時を想像し思いにふけりました。
※本連載は、神宮寺報「山河」014号に掲載されたものを加筆・修正したものです