フォトギャラリー~仏教の聖地巡礼~(2)

連載「フォトギャラリー~仏教の聖地巡礼~」(全7回)は、初めてお釈迦様ゆかりの地を訪れた僧侶の聖地巡礼の旅を、写真と共にたどる旅行記です。驚きと感動に充ちた体験を、写真を交えながらお伝えできればと思います。
25世紀という時間
まず念頭に置かなければならないことは、お釈迦様がインドの地で生きていたのは2500~2600年も昔のことだということです。
今はインドと呼ばれているこの国でも、長い歴史のなかで統治する王朝や国がどんどんと移り替わってきました。暮らす人々や社会が変われば、失われていくものがあるのは当然のことでしょう。

上の写真をご覧いただくと小高いストゥーパの上に八角形の塔が建てられているのが分かるかと思います。この場所はお悟りを開かれたお釈迦様を、過去に苦行を共にした5人の修行者たちが出迎えた場所として、5世紀ごろに土台となるストゥーパが建てられました。
そして16世紀後半、イスラム王朝のムガル帝国の時代に八角形の塔をストゥーパの上に作ったとされています。この塔を見るだけでも、宗教の変遷、時代の移り変わりを目の当たりにした気がします。

今では仏教は世界三大宗教とも呼ばれていますが、インドには現在、仏教徒が全人口の0.7%しかいないといいます。インド国民の大多数がヒンドゥー教徒だという現状です。
歴史的に変わったのは信者の数だけではありません。驚いたことにお釈迦様の聖地も人々の記憶からも消え、歴史の彼方に失われてしまっていきました。
お参りした仏跡の数々も19世紀になり、イギリス統治下時に考古学者によって再発見されたものです。

そんな時代の変遷と喪失を経てなお、仏教の教えは時代を超え国境を超え、現在でも多くの人の心のより所となっているのです。ご存知のようにスリランカやタイ、ミャンマー、チベット、中国、台湾、モンゴルなどたくさんの国や地域では仏教が信仰され、欧米の国々でも仏教は広がりをみせています。
その大本がお釈迦様の生きたインド、ネパールなのです。25世紀というお釈迦様が生きた時代を超え、インドから遠く離れた日本に暮らす仏教徒として仏教のルーツを参拝できたことは、とても感慨深いものでした。


※本連載は、神宮寺報『山河』14号に掲載された記事に写真を加え、加筆・修正したものです。